第15話「峠の女」  @百物語2011本編

著:空色 ◆p4Tyoe2BOE  


65 :空色 ◆p4Tyoe2BOE :2011/08/19(金) 22:08:17.37 ID:zf04GSaIO
峠の女(1/2)

友達とコンビニに行ったときの話。
有名な走り屋の集まる峠の下のコンビニで、やんちゃな連中がたくさんいた。
その中でコンビニの中で買い物をする為にレジに並んでいた。
結構人がいたので、面倒だなーなんて思っていた時に山の方から猛スピードの車がくるのが見えた。急ブレーキの音が店内まで聞こえて、皆何事かとそっちを注目した。
停まった車はDQN車。
そこから慌てるように二人の男が飛び出してきた。自動ドアが開いて、その男二人は口々になんか喚いていた。
「女が!」「幽霊だった!」
そんな事を言っていたと思う。はっきり言って動揺しすぎていて、噛み噛みだしわからん。でも顔は真っ青で。
幽霊が出ると有名な峠だし、そんなに気にしてなかったんだけど、そのうちレジで並んでた一人が「わっ!?」と声を上げた。
そのうちに店内がぎゃぎゃーと騒がしくなって、店の中の客は窓際じゃなくて奥の方へと逃げ出してた。
なんだろうと思った時に、友人に教えられてようやくわかった。
DQN車の中を覗き込んでいる女がいた。
どう考えても普通の女じゃなかった。動きが何か変。
そのうちこちらに気づいて全力で走ってきた。長い髪がぐっしょり濡れているみたいだし、服もなんだか汚い。しかも裸足。
なんだか向こうが透けて見える。
もう店内大パニック。


66 :空色 ◆p4Tyoe2BOE :2011/08/19(金) 22:09:10.42 ID:zf04GSaIO
(2/2)

バンっ!て音がして、女は自動ドアにぶつかってそのままその場にしゃがみ込んだ。
何が起こったのか一瞬わからなかったが、悲鳴は大爆笑に変わった。
自動ドアが開かなかったから、全力でぶつかったのだから相当痛そう…。
笑ってから、落ち着いてもう一回見たときには女はいなかった。
ドアの前にも駐車場にも。
女が『人間じゃない』事に気づいて笑いもしぼんでいった。
姿が見えないだけで、まだいるかもしれない。笑った自分達を恨むかもしれないと、誰ともなく思ったんだと思う。
とりあえず会計を終えても誰も出て行かない。出入り口に近づくのも誰しない。
十分くらい経ってから、奥から店長らしき人が出てきて自動ドアの前に向かった。
「大丈夫ですよ」
って言いながら泣いていたDQN二人に塩をばらばらと投げつける。
「怖い人は言ってください、塩サービスしてます」
笑いながら言ってる店長のお言葉に甘えて、塩を撒いてもらってみんな外に出ることにした。やっぱり女の姿はなかったけど。
「これで三回目です」
とこっそり教えてくれた店長。どうやら峠を攻めるDQN車に憑いてくるんじゃないかということだった。
実は私は女を見たのはこれで二回目。
一回目は生きている人間じゃないかと本気で思ったくらいだ。
一回目の時は、車の屋根にしがみついてそのまま女は行ってしまったので正直、ドッキリ系の撮影かと思っていたんだけど。
違ったらしい。