第22話「彼女の声」  @百物語2011本編

著:啓 ◆N5NMa8pQLuy1  


88 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/19(金) 22:35:34.62 ID:pJf+sL8/0
啓 ◆N5NMa8pQLuy1様
【彼女の声】
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10年程昔の事ですが、幼なじみのお兄さんにHさんという男性を紹介されました。
ドライブへ連れて行ってもらい、お食事をしてその日はお別れ。
部屋へ入り落ち着いた頃にPHS(当時)へ着信。Hさん。
「今日はどうもありがとう!また時間作って会ってくれる?」
素敵な方だったので、もちろんOK。
幼なじみのお兄さんへすぐに電話して、報告したのですが
話を聞くと3年近く彼女もいなくて、好きな人もなかなか出来ないヤツだと。
ふーん・・・と思いながらも、ラッキー!くらいにしか思っていませんでした。

その次の日の夜12時近くに、Hさんから着信。

「残業でこの時間だよー。ごめんねこんな遅くに」
「全然大丈夫だよー、この時間ならまだ起きてたし」

などと他愛もない会話をしていたのですが、横から女性がHさんへ

「ちょっと誰と話してるの!?」
「また女?」
「いい加減にしてよ」

うわぁー、なんだかんだ彼女?らしい人いるじゃないのと落胆し
彼女いるの?とも聞けず(Hさんに悪いので)、素っ気無く電話を切りました。
それが気になったらしく、次の日もその次の日も着信がありましたが無視。
それから一ヶ月程経った頃、幼なじみから電話があり、その時の事を聞かれました。

「Hが気にしてたぞー、悪い事言ったんじゃないかって。」
「だって、Hさん彼女いるんだよね?話してる時に横から文句言っててー!」
「そうかー・・・ じゃあHに言っておくから、次に電話来たら出てやってくれ」


89 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/19(金) 22:36:15.31 ID:pJf+sL8/0
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そのあとすぐにHさんからの着信。電話に普通に出ると、どうも様子が変で。
前に会話をした時に、どんな事を女性が言っていたのかなどを詳しく聞かれました。
一通り話したあと、こちらもなんなのだろう?と腑に落ちなかったので
なんなのですか?と少し怒り気味に聞くと、少し黙ったあと静かに言いました。

「Eちゃん、俺本当にEちゃんとだったら仲良くなれるんじゃないかと思ってた。
けど迷惑を掛けられないから、俺はもう近づかないよ」

なにかあるなとピンと来たので、良かったら教えてくれないかな?と。

「俺が好きになりそうな人が出てくると、必ず邪魔をする女がいるんだ。
前に好きになったコも、Eちゃんと同じこと言ってたよ。彼女いるんでしょう?って。
そのコは交通事故に遭ってしまったし、他のコも色々・・・」


90 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/19(金) 22:36:56.83 ID:pJf+sL8/0
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それ以上は聞けなかったので、すぐに幼なじみへ電話。
そこで聞いたのは、Hさんが付き合っていた女性が勘違いで自殺してしまったと。
電話での声だけでも、当時はもの凄く怖かった事を覚えています。
けど、それだけじゃないんです。

それから1ヶ月も経たない頃、友人らとClubへ行った時の事。
フロアで踊っていると、こちらへ視線があるのに気付き見てみるとなんとHさん。
偶然同じClubに居たみたいで、まずいなぁーと。お互い言葉は交わさずにいたのですが
なんとなく意識をしていて、居心地が悪く。
フロアから出て、カウンターへお酒を取りに行った時。

私の頭上に、高さ数メートルあるであろう天井からライトが落ちてきました。
近くにいた従業員が庇ってくれて、私には一切怪我はありませんでしたが
その人は手に怪我をしていました。すぐにオーナーが来て、今までこんな事は無く
大変申し訳無いと謝罪してくれましたが、私は放心状態。

普通にそんな事故があったら、怪我が無く良かったで済むのですが
私には思い当たるフシがあるので、言葉も出ず。
私を追いかけて、フロアから出てきたであろうHさんがすぐ後ろに居て
振り返ったままの姿勢で、じーっと見詰め合ったまま無言。
Hさんはお友達を連れて、挨拶もせずそのClubから出て行きました。

そのHさん、今どうしているのかも幼なじみに会っても聞けずにいます。


終わり