第22話「彼女の声」 @百物語2011本編
著:啓 ◆N5NMa8pQLuy1
【彼女の声】
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10年程昔の事ですが、幼なじみのお兄さんにHさんという男性を紹介されました。
ドライブへ連れて行ってもらい、お食事をしてその日はお別れ。
部屋へ入り落ち着いた頃にPHS(当時)へ着信。Hさん。
「今日はどうもありがとう!また時間作って会ってくれる?」
素敵な方だったので、もちろんOK。
幼なじみのお兄さんへすぐに電話して、報告したのですが
話を聞くと3年近く彼女もいなくて、好きな人もなかなか出来ないヤツだと。
ふーん・・・と思いながらも、ラッキー!くらいにしか思っていませんでした。
その次の日の夜12時近くに、Hさんから着信。
「残業でこの時間だよー。ごめんねこんな遅くに」
「全然大丈夫だよー、この時間ならまだ起きてたし」
などと他愛もない会話をしていたのですが、横から女性がHさんへ
「ちょっと誰と話してるの!?」
「また女?」
「いい加減にしてよ」
うわぁー、なんだかんだ彼女?らしい人いるじゃないのと落胆し
彼女いるの?とも聞けず(Hさんに悪いので)、素っ気無く電話を切りました。
それが気になったらしく、次の日もその次の日も着信がありましたが無視。
それから一ヶ月程経った頃、幼なじみから電話があり、その時の事を聞かれました。
「Hが気にしてたぞー、悪い事言ったんじゃないかって。」
「だって、Hさん彼女いるんだよね?話してる時に横から文句言っててー!」
「そうかー・・・ じゃあHに言っておくから、次に電話来たら出てやってくれ」
そのあとすぐにHさんからの着信。電話に普通に出ると、どうも様子が変で。
前に会話をした時に、どんな事を女性が言っていたのかなどを詳しく聞かれました。
一通り話したあと、こちらもなんなのだろう?と腑に落ちなかったので
なんなのですか?と少し怒り気味に聞くと、少し黙ったあと静かに言いました。
「Eちゃん、俺本当にEちゃんとだったら仲良くなれるんじゃないかと思ってた。
けど迷惑を掛けられないから、俺はもう近づかないよ」
なにかあるなとピンと来たので、良かったら教えてくれないかな?と。
「俺が好きになりそうな人が出てくると、必ず邪魔をする女がいるんだ。
前に好きになったコも、Eちゃんと同じこと言ってたよ。彼女いるんでしょう?って。
そのコは交通事故に遭ってしまったし、他のコも色々・・・」
それ以上は聞けなかったので、すぐに幼なじみへ電話。
そこで聞いたのは、Hさんが付き合っていた女性が勘違いで自殺してしまったと。
電話での声だけでも、当時はもの凄く怖かった事を覚えています。
けど、それだけじゃないんです。
それから1ヶ月も経たない頃、友人らとClubへ行った時の事。
フロアで踊っていると、こちらへ視線があるのに気付き見てみるとなんとHさん。
偶然同じClubに居たみたいで、まずいなぁーと。お互い言葉は交わさずにいたのですが
なんとなく意識をしていて、居心地が悪く。
フロアから出て、カウンターへお酒を取りに行った時。
私の頭上に、高さ数メートルあるであろう天井からライトが落ちてきました。
近くにいた従業員が庇ってくれて、私には一切怪我はありませんでしたが
その人は手に怪我をしていました。すぐにオーナーが来て、今までこんな事は無く
大変申し訳無いと謝罪してくれましたが、私は放心状態。
普通にそんな事故があったら、怪我が無く良かったで済むのですが
私には思い当たるフシがあるので、言葉も出ず。
私を追いかけて、フロアから出てきたであろうHさんがすぐ後ろに居て
振り返ったままの姿勢で、じーっと見詰め合ったまま無言。
Hさんはお友達を連れて、挨拶もせずそのClubから出て行きました。
そのHさん、今どうしているのかも幼なじみに会っても聞けずにいます。
終わり
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