第17話「古道具」  @百物語2011本編

著:あかヰほくろ ◆zhUkpZ4lCM  


73 :あかヰほくろ ◆zhUkpZ4lCM :2011/08/19(金) 22:13:08.19 ID:pttk6Sb50
「古道具」

(1/2)
とある城下町に行った時の事、城を見た帰りに土産物を見ていました。
私は古道具にとても興味があり、その時も一軒の古道具屋さんを見つけました。

そこでは道具を売っているのではなく、ご主人の先代が薬問屋で、ご主人曰く
「この店構えを残しておきたかった事と、この町を訪れる人に歴史を紹介したくて
この場所を展示場にしたんです」と。
ご主人がそうしているうちにご主人の元に明治以降の古い物が集まるようになり、
その当時の薬の看板を始め、下駄、旅の小物、秤、地図…等々、所狭しと古い
ものがたくさん展示されていました。
私はひとつひとつどんな時にどういうふうにして使うのかを聞くとご主人も細かく丁寧に
教えてくれて、私は昔の人の知恵の凄さに感心したり、ご主人とたくさんお話をして
和気あいあいと長い時間を過ごしました。

そこには薬屋の帳場もあり、薬箪笥や屏風もありました。ご主人の意向であがらせて
もらい、また細かく見ていると、ご主人が額縁に飾ってある書きものを「これは勝海舟
直筆の書です」と言うので「ええ〜、凄い!」と驚いて、また帰りがけに写真を撮って
もいいかと聞くと「どうぞ気兼ね無く」と言うので気になるものをたくさん撮り、
帳場を撮ったあと、フラッシュを点けてない事に気づき、帳場だけフラッシュを点けて
2枚撮りました。

74 :あかヰほくろ ◆zhUkpZ4lCM :2011/08/19(金) 22:14:21.05 ID:pttk6Sb50
(2/2)
私は良い旅だったなぁ…と電車の中で撮った写真を見直しました。
するとフラッシュを点けた帳場の写真にうっすらと煙草の煙の様な白いもやが写って
いました。2秒前に同じ場所を撮った写真には写っていません。
どう見ても光の反射ではなく、被写体が動くわけは無いし、私も手元を動かしていない
のでブレた時のものでもありません。

…これは何だろう…何か変なものが写ってしまった…
私はこういう写真を初めて撮ったのですが特に怖さも感じませんでした。
もしかするとご主人と楽しそうに会話をしていたから、先代も話を聞きに来たのかな。
そう考えたらとても微笑ましく感じました。
だけどもしかすると勝海舟の霊だったら凄い事ですよこれは…とあとでちょっとだけ
思ったのはここだけの話です。

「完」