第28話「入れ代り」  @百物語2011本編

著:たったかた〜  


109 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/19(金) 23:11:36.10 ID:pJf+sL8/0
たったかた〜様

[入れ代り]
1/6

200x年xx月xx日(x曜日)

午後14:30
右肩にこぶみたいなのができてきた。
見ているとだんだん皮膚が盛りあがり、裂けて目玉が出てきた。
不思議な事に痛みも出血もない。
白いボールのようだが黒目があり、その周りが充血している。

午後14:40
左肩にも同じようにこぶができてきた。
やはり同じように皮膚が盛りあがり、裂けて二つ目の目玉が出てきた。
やはり痛みも出血もない。
気持ち悪いが病院に持っていくために、バケツを階下から用意してきた。

午後14:50
今度は右の肘にこぶができた。
人間の左手首の骨が出てきた。
バケツの中に放りこむ。


111 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/19(金) 23:12:17.75 ID:pJf+sL8/0
2/6

午後15:00
右膝にこぶができた。
右手首が出てきた。
やはり、痛みも出血もない。

午後15:10
左肘にこぶ。
左足首が出てきた。

午後15:20
左膝にこぶ。
右足首が出てきた。
いったいいつまで続くのだろう?

午後15:30
左わき腹から突然皮膚を破って腕が折り畳んだ状態で出てきた。
どっちの腕だろう?

午後15:39
右わき腹から腕が出てきた。
同じように折り畳んだ状態だ。
両腕が揃った。
バケツに入らないのでレジャーシートを敷き、
並べてみる。


112 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/19(金) 23:12:58.60 ID:pJf+sL8/0
3/6

午後15:48
右太もものつけ根から片脚が出てきた。

午後15:57
今度は左太ももから片脚が出てきた。
どっちがどっちの足だかわからないが、一応並べてみる。
自分の身体をよく見てみると、出てきたところはもうすでに
皮膚の再生が終わって、傷口さえ見えない。
人間の皮膚の再生力とはこんなに凄いものだとは思わなかった。
少し感激する。

午後16:05
首筋、ちょうどボンクボのあたりから腰のあたりにかけて、
皮膚が裂け、肋骨と脊髄が出てきた。
目玉以外は全部骨だ。
しかし、私の身体のどこにこんなものがあったのだろう?

午後16:08
あとは骨盤と頭蓋骨が出てくれば、白骨死体一体分が揃う。
臀部から骨盤が出てきた。
どうやら男性の骨のようだ。

午後16:15
みぞおちから臍にかけて皮膚が裂けてきた。
頭蓋骨が出てこようとしている。
これで一体が揃う事になる。
しかし今までとは違い、ゆっくりと出てきている。
今ようやく目のあたりだ。
鼻の部分の穴が少し見えてきた。


113 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/19(金) 23:13:39.52 ID:pJf+sL8/0
4/6
午後16:50
頭蓋骨が出てきた。
何故頭蓋骨はこんなに時間がかかったのだろうか?
全部の骨を組みあわせてみる。
目玉をポッカリと空いた穴の中へ入れてみる。
ちょっと怖いが、理科室の骨格模型のようになった。

午後18:00
人間が横たわっている。
人間の皮膚を背中側頭部から腰のあたりまで、ナイフで裂く。
内臓を傷つけないように慎重に切りこみを入れる。
臀部から足にかけて、裁ち鋏で切っていく。

午後19:00
ようやく、切りこみが終わった。
ゆっくりと頭部から皮を剥いでいく。
以外と時間がかかるものだ。

午後20:18
綺麗に皮が剥げた。
しかしこの人間も不思議だ。
皮を剥いだのに血が一滴も出ない。
ちょっと体脂肪が多い気がするが、よしとしよう。
ちょっと休憩をする。

午後20:35
ゆっくりと慎重に内臓を取出し、自分の身体に入れてみる。
具合は…完璧とは言えないが、まぁこんなものだろう。
コイツ、脂肪肝だ。
一度内臓を取出し、ナイフで肝臓の脂肪を削っていく。


114 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/19(金) 23:14:38.76 ID:pJf+sL8/0
5/6
午後21:15
再度内臓を自分の身体に入れる。
さっきより具合がいいようだ。

午後21:30
剥ぎ取った皮に右脚をゆっくり滑りこませる。
スルリと入った。
次は左足。
途中で骨が引っ掛かったが、皮を少し引っ張りながら入れた。
あとは難無く皮を着る事ができた。
当り前だ。
俺には筋肉がないのだから。

午後21:55
皮がブヨブヨして気持ち悪い。
首と手を180度回転させて、裂け目を縫っていく。
頭部は鏡を見ながら縫う。

午後22:22
全部縫い終わった。
後は筋肉をつけるだけだ。
そこに転がっている死体の筋肉を慎重に骨から剥がして行く。

午後23:00
遅いディナータイムだ。
剥がした筋肉を少しずつ頬ばる。

午後23:57
食事を終え、暫しの休息。
まだ身体がブヨブヨしている。


115 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/19(金) 23:15:19.66 ID:pJf+sL8/0
5/6

200x年xx月xx日(x曜日)

午前01:00
鏡で傷口の確認をしてみる。
もう塞がっている。
抜糸をする。

午前01:30
待望の入浴タイムだ。
バスタブにいっぱいのお湯を張り、身体を沈める。
皮膚が水分を吸い込むのがはっきりとわかる。

午前03:00
バスタイム終了。
濡れた髪をドライヤーで乾かす。
ようやく皮がフィットした。

午前03:15
レジャーシートに転がっている白骨を処分しなくてはいけない。
車で近所の山に行き、登山道から少し離れた茂みに穴を掘って埋めた。
目玉は取出して木の枝に突きさした。
早朝、カラスが食べに来るだろう。

午前04:00
ひと眠りする事にする。
慣れていない事をすると非常に疲れる。



116 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/19(金) 23:16:00.66 ID:pJf+sL8/0
6/6

午前05:00
起床。
出勤の準備をする。
階下へ降りてトーストを頬ばりながら、コーヒーで流しこむ。

午前06:00
昨夜の疲れがまだ残っているが、出勤のため家をでる。
これから、平凡な毎日が始まろうとしている。


【完】