第33話「変身」  @百物語2011本編

著:怪獣の子供 ◆dxakKNa1zM  


137 :怪獣の子供 ◆dxakKNa1zM :2011/08/19(金) 23:56:38.04 ID:k+LLH6dU0
【変身】
わたしが小学生の頃の話、中休み、体育館、いじめられっこのAを跳び箱に閉じ込め、遊んでいたのだが。
恐怖におののき、箱の中、豚のように泣き喚く友人、はじめはそんな友人を面白がっていたのだが、
次第に彼の声も弱弱しく、風船の空気が抜けるような。
Aのことなど気にせず、狂った猿のように、箱の上にかわりばんこに座りあう、そしてわたしの番、
と思うと、突然の咆哮、まるで獣、いや、鬼、とても子供の喉から出る叫びではない、
地の底から轟くような重低音が、まるで体育館全体をふるわすように。
まわりの友人たちは蜘蛛の子よ、散って、倉庫から逃げ出す、取り残されるは箱の上のわたし、
あわてて箱から飛び降りようと箱に手をつく、そのとき、体が宙に浮く感覚、突然地面が膨れ上がり、と思うと、頭に鈍痛。
わたしは天井に頭をぶつけて、箱が崩れた。
振り返ると、顔を真っ赤に、泣きしゃぐるA。
やはりただのもやしっ子、しかし上を見上げると、天井までは十数メートルはゆうにある、
いったい全体、あの頭の痛みは幻だったというのか、確かにわたしは頭を天井に打ったのだが……。
何かぞっとするものがあって、わたしはAを見ないようにして、教室に戻る、
あの鬼の咆哮は何だったのか、確かめようにも、
一足先に教室に戻った連中は、けろりとした顔をしていた。【おわり】