第34話「病院」  @百物語2011本編

著:Yenn ◆3qDMUSp0ng  


139 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 00:07:33.05 ID:hPkmSRgw0
Yenn ◆3qDMUSp0ng様
病院 

 数年前、ある内科の大部屋に入院していました。
 そこは4人部屋で、アタシは窓際のベッド。
 隣の廊下側のベッドには、少し年上の女性が途中で入ってきました。
 ある日の夜中、ベットからカーテン越しにうめき声みたいな、
 小さな苦しそうな声が聞こえて、「大丈夫ですか?」と声をかけたんですが、
 微妙な声しか返ってきません。
 ナースコールをするか考えていると、看護婦さんが部屋に入ってきて、
 すぐに隣のカーテンを開けました。
 小さな話し声がしだして、これで大丈夫だろうと、その日は何事もなく、
 アタシはそのまま眠りに着きました。
 
 翌日朝、隣の女性にあいさつすると「昨日はごめんね」と。
 「大丈夫でしたか?」と尋ねると、彼女がしたのはこんな体験だったそうです。
 ヘッドホンを外して深夜番組を消そうと思った時、足元のカーテンが揺れた気がして、
 顔だけ向けて見てみると、小さな男の子が立っていた。
 少し霊感があったらしいその女性はすぐに、「生きてない」と思ったそうです。
 でも、体が動かない。ナースコールに手も触れない。
 
 なんとか気づいて助けてもらおうと、力いっぱい叫ぼうとしていた。
 それが、アタシの聞いた彼女のうめき声でした。
 アタシが声をかけたのは聞こえたそうですが、返事はやっぱりうめき声にしかならなかった。
 
 看護婦さんは深夜の見回りで、たまたま声を聞いて、あわててカーテンを開けて
 様子を見てくれたそうです。
 看護婦さんがカーテンを開けると同時に、その男の子は消えたそうですが、
 がっちり起きてた真横でそんな事が起こってるのに、全然何とも思わなかったアタシは、やっぱり霊感がないんだと思いました


【完】