第34話「病院」 @百物語2011本編
著:Yenn ◆3qDMUSp0ng
病院
数年前、ある内科の大部屋に入院していました。
そこは4人部屋で、アタシは窓際のベッド。
隣の廊下側のベッドには、少し年上の女性が途中で入ってきました。
ある日の夜中、ベットからカーテン越しにうめき声みたいな、
小さな苦しそうな声が聞こえて、「大丈夫ですか?」と声をかけたんですが、
微妙な声しか返ってきません。
ナースコールをするか考えていると、看護婦さんが部屋に入ってきて、
すぐに隣のカーテンを開けました。
小さな話し声がしだして、これで大丈夫だろうと、その日は何事もなく、
アタシはそのまま眠りに着きました。
翌日朝、隣の女性にあいさつすると「昨日はごめんね」と。
「大丈夫でしたか?」と尋ねると、彼女がしたのはこんな体験だったそうです。
ヘッドホンを外して深夜番組を消そうと思った時、足元のカーテンが揺れた気がして、
顔だけ向けて見てみると、小さな男の子が立っていた。
少し霊感があったらしいその女性はすぐに、「生きてない」と思ったそうです。
でも、体が動かない。ナースコールに手も触れない。
なんとか気づいて助けてもらおうと、力いっぱい叫ぼうとしていた。
それが、アタシの聞いた彼女のうめき声でした。
アタシが声をかけたのは聞こえたそうですが、返事はやっぱりうめき声にしかならなかった。
看護婦さんは深夜の見回りで、たまたま声を聞いて、あわててカーテンを開けて
様子を見てくれたそうです。
看護婦さんがカーテンを開けると同時に、その男の子は消えたそうですが、
がっちり起きてた真横でそんな事が起こってるのに、全然何とも思わなかったアタシは、やっぱり霊感がないんだと思いました
【完】
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