第52話「女性専用車両にて」  @百物語2011本編

著:よもや ◆t7bs99KZl0wn  


204 :よもや ◆t7bs99KZl0wn :2011/08/20(土) 01:28:44.78 ID:gy7GSVb50
第52話 [ 女性専用車両にて ]
— 職場の女性から聞いた話 —

【1/3】
朝の都営新宿線の先頭車両は、女性専用車両になっている。
男性は、体の不自由な人とその付き添い、または小学生以下の子供とその連れしか乗れない。
通勤時間帯に女性ばかりの車両に乗り込むのは勇気が居るせいか、
子供連れで乗っている男性は外国人くらい。
その外国人はニヤケていて非常にキモイ。が。まあ置いとく。

もう一人、どうみても、体が不自由とは思えない、吊り目の65歳〜70歳位の男が乗っていた。
周りの女性は完全にスルー。しかし彼を中心にぽっかりと空間が出来ており、
その分周りは混雑していた。
そのうち、つり革の渡してある棒にぶら下がってみたり不審な動きをしだす。
女性達はそれでもスルー。




205 :よもや ◆t7bs99KZl0wn :2011/08/20(土) 01:29:42.83 ID:gy7GSVb50
【2/2】

不自然な空気の中、いくつかの駅を過ぎていく。
不審な男はそのまま、九段下の駅で降りていった。
その男の傍に居た、二人組が囁いていた。

「…あれ、身体障害者じゃないよね?」
「九段下って、朝鮮銀行が近くにあるんだよ」
「…そういえばつり目、だったね」
「触らぬ神になんとやら。禍国の国技に巻き込まれたくなかったら、
 空気を読むのも大事なんだよ」

都会って怖い、と心底思った。

[ 完 ]