第53話「帰って来る女」  @百物語2011本編

著:4コ卵 ◆hcYOhjUtjg  


207 :4コ卵 ◆hcYOhjUtjg :2011/08/20(土) 01:31:01.89 ID:TPh0jBLo0
第53話 「帰って来る女」 【1/2】


伯父が新婚の頃住んでいた社宅の話しです。
社宅はかなり古いものでしたが、二階建てで、夫婦二人でとりあえず住むには十分でした。

伯母は、最初の頃は、ここは何の部屋にして、あれはあそこに置いて…と楽しそうにしていましたが、
ある日気がつくと、二階の部屋が締め切られ、全く使われていない様子。
おまけに二階自体に全く上がっていないようなのでした。
理由を聞くと、部屋が広すぎるから、とか物干し台の日当りが悪いから、というような事を言うので、
伯父はそうなのか?とその時はさほど気に止めなかったそうです。

ところがだんだんと伯母の様子がおかしくなり、家中の雨戸を締め切り、窓の開閉や人の出入りにも
酷く神経質になっている様子。
妻の異変に気付いた伯父が事情を問いただすと、この家に越して来た頃から毎日のように同じ夢を
見続けているというのです。

最初は引越しの片付けの途中でうっかり二階の部屋で居眠りをしてしまった時の事でした。


208 :4コ卵 ◆hcYOhjUtjg :2011/08/20(土) 01:32:32.72 ID:TPh0jBLo0
 【2/2】

ガラリと玄関の開く音がして、ダダダっと凄い勢いで階段を上がって来る音がし、
部屋に見知らぬ女が入って来たのです。
その女は伯母をジロリと睨みつけると、あとは物も言わず、ただじっとこちらに背を向けたまま
部屋のまん中に座っているそうなのです。

それ以来、夜となく昼となく、同じ夢を見るようになり、ついには起きている時にまで、見るように
なってしまったそうです。

気味が悪くなって、二階の部屋の戸を締め切って入れないようにしてみましたが、効果はなし。
やがて伯母は取り憑かれたように家中の雨戸を締め切り、窓を締め切り、誰も外から入れないように厳重に
戸締まりをするようになり、すっかり人が変わったようになってしまいました。
慌てた伯父は、その社宅から退居することに。

後から上司に聞いた話しでは、以前に入居していた社員の奥さんが、あの社宅に入居した頃から
精神的におかしくなり、体面を気にしたその社員が、奥さんが亡くなるまでずっと例の二階の部屋
に軟禁状態にしてしまっていた、ということでした。

伯母の夢に出て来たのはその奥さんだったのでしょうか。
あるいはその奥さんも伯母と同じように、何かの怪異に遭遇していたのでしょうか。
-おわり-