第55話「後部座席」 @百物語2011本編
著:啓 ◆N5NMa8pQLuy1
【後部座席】
RV車に乗っていた時の事です。
当時付き合っていた彼を助手席に乗せて、2人で深夜に映画を観に行こうとしてました。
信号で停まっていたら、偶然同じビル内で働いていた女の子達が横に並んで(車で)
窓を開けて「どこ行くの?」「彼氏さんですかぁ?」など会話をして
青信号に変わった瞬間に、私達の車の方が先に発進。
お互い「またねー」などとにこやかに手を振って別れたんだけど。
次の日。
そのコ達と「昨日は偶然だったねー!」と会話をしていたら
彼女達が笑顔で「あんなにたくさん乗っけて、どこ行ったんですかぁ?」と。
「え?彼氏と2人だったよ。」
「えー!何言ってるんですか後ろに3人?4人?乗せてましたよね?」
「え?彼氏と2人だったけど・・・」
「だって信号変わったとき、後ろに乗ってた人達も手を振ってくれましたよ」
と、普通に話されました。騙しているんだなと思ったのですが
私の顔色を見た彼女達が「ごめんなさい・・・けど、本当の話なんです。」と。
それからしばらくはいろんな人に「ちょっと、聞いたけど大丈夫?」と言われてました。
車を売却するときに、あまりの安値に驚いてわけを聞いてみると
いわゆる「にこいち」で、なんらかの理由で二つの車を一つにしたものと聞き
二度と中古車を購入することはしないと心に誓いました。
終わり
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