第6話「ストラップ」  @百物語2011本編

著:あかヰほくろ ◆zhUkpZ4lCM  


33 :あかヰほくろ ◆zhUkpZ4lCM :2011/08/19(金) 21:29:40.41 ID:pttk6Sb50
「ストラップ」

店で携帯を片手に服を見ている時にカチャッて何かが落ちた音がした。
下を見ると携帯ストラップ。私はネジが緩んだのかな?そう思い家で直そうと先に
買い物を済ませた。
ストラップは時々落ちる。それはネジが緩むか紐が切れるかのどちらかだ。
今回もそうだろうと思ってどこから落ちたのかよく見てみた。するとネジだけ残ってる
のも無いし、落ちた方はボールリングのストラップで金具が緩んでるわけでも無かった。
私は「えっ?」と思いながら2つを何度も見比べて、どうやったら落ちるのかしばらく
考えた。
…まるで知恵の輪の様に切れ目も無いのにすり抜ける様にして落ちたストラップ。
私は謎を解くべく友達にも見てもらった…けどみんな不思議そうな顔をするばかりで
何で落ちたのか未だにわからない。
ちなみに落ちたストラップは姉が住む地域のご当地ものだった。
…私はその謎のストラップを携帯に付けるか迷っていた。
すると友達が「落ちたものを付けると縁起が悪いよ」と言い、私はそれもそうだなと
思い付けるのをやめた。そして家に持ち帰ろうと思ったけど、気まぐれで通り道の
金網にぶらさげた。

そうやって、自分の手元からそのストラップを完全に離したせいかはわからないが、
それまで不仲でしょっちゅうメールや電話で喧嘩ばかりしていた姉から一切連絡が
来なくなった。そればかりか、姉との関係が年賀メールのやりとりや、地震の安否を
確認する程度の自然な仲になったのだ。
…これはストラップが私と姉の憎しみの全てを自ら落ちる事によって落としてくれたの
かな?と、都合のいい考えかもしれないけど私はそう思っている。

「完」