第7話「白黒」  @百物語2011本編

著:空色 ◆p4Tyoe2BOE  


35 :空色 ◆p4Tyoe2BOE :2011/08/19(金) 21:35:32.47 ID:zf04GSaIO
白黒

まだ小さい頃の話。
私は鍵っ子で、学校帰りは一人が多かった。
学校の帰り道いつもの細い道を歩いていると、不意に肩を叩かれた。
振り返ったが、誰もおらず頭の中には?が浮かんでいた。
気のせいで済まし、また家の方を見ると絶句した。全部白黒。一瞬で色盲になっていた。
でも意味がわからない私は驚きながらもその風景を楽しんでいた。
白と黒の濃紺で出来た世界は、不思議で仕方なかった。
そのうち、変な事に気づく。
道には白黒の人が何人もいた。子供も大人もいて、座っていたり立っていたりするのだが、一度も見たことがない人達。
着物の人もいるし、皆なんだか動きが遅い。それに少し透けているように見えた。
おかしい事ばかりだな、と思いながら家に入ると中にも人がいた。
泥棒!?と考えたけれど、その人は帰ってきた私を見て泣きはじめてしまった。
歳は母くらい、でも見たことがない綺麗な女の人だった。
泥棒なのに何だか初めてあった気がしなかったのもあってとりあえず家に入ろうとした途端、女の人が手を突き出してきた。
「ダメだよダメだよ。見ちゃだめ」
と何回も言われ、背後を示された。
意味が解らないまま振り返ると、自分の後ろは色がついた世界だった。
また振り返って綺麗な人を見ようとしたが、そこはもう白黒の世界じゃなかった。綺麗な人もいない。
それっきり白黒の世界はみていないのだが、色盲になったにしてもおかしな体験だった。(というか、症状として有り得ないみたい)
数十年後自称霊感持ちの友人から、家への道には霊がいるという話を聞いた。
詳しく聞くと白黒で見た人達とほぼ同じ。
そして我が家には綺麗な女の人、多分守護霊だろうというのがいるのまで。
此処で軽い疑問が出来た。
最初に肩を叩いて白黒の世界を見せたのは誰なのか?
あれから白黒の視界になった事はないので、解らないままでいいのかも知れない。