第60話「位牌堂の屋根裏」 @百物語2011本編
著:ガタロー ◆l7Mb16VB82
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俺の親父は電気屋やってるんだが、その親父が今から20年以上前に田舎にある菩提寺の位牌堂の
電気の配線を通す作業をやってた時の話
当時の配線工事は今と違ってかなり面倒な作業だったらしく、位牌堂の屋根裏で懐中電灯片手に
四苦八苦していたそうだ
昼過ぎに始めた作業は日もだいぶ傾き始め、親父はもう明日に回そうとか考えていたとき、
カシャ…カシャ…と位牌堂から屋根裏にかけたハシゴを上ってくる音が聞こえたそうだ
親父はてっきり和尚さんが遅くなったんで見に来たのかと思い
「暗くてなかなか仕事が進まないですよ」
と話しかけたそうだ
しかしハシゴを上った人は無言。何も返事は返ってこない
「和尚さん?」
親父は懐中電灯をハシゴをかけている屋根裏の出入り口に向けるが、
親父のいる場所からは結構距離が離れており、懐中電灯の光もあまり当たらない
しかしシルエット程度は分かる。そこに人の居る感じは無かった
気のせいかと思うも気味が悪くなった親父は今日は終わりと道具を片付け始めた
その時。
『クフフ・・・』
子供の押し殺した笑い声が屋根裏の出入り口から聞こえてきた
親父は再び懐中電灯を向ける。やはり誰も居ない
子供のいたずらか。しかしこの寺は和尚さん夫婦だけで子供は居ない
ではこの部落の子供が寺で遊んでるのか。しかしもう時間が時間である
そんな事を頭の中で考えていたとき
『キャハハハハハハハハハハハハハ!』
バタバタバタバタバタバタ!!!!!!と屋根裏を誰かが走り回る音が
子供の笑い声と共に辺り一面に広がった
慌てて懐中電灯を音のする方に照らすが何も見えない
しかし子供は狂ったような笑い声を上げながら相変わらず走り回っている
親父は努めて冷静に道具を片付け、走り回る見えない子供の笑い声をヨソに
屋根裏の出入り口に辿り着き、ハシゴに手をかけた
『バイバイ』
ハシゴを降りる時にそんな声がすぐ真正面から聞こえたそうだ。
そして親父は離れにいた和尚さんに今あった話をした
「ここはお寺ですからね。何でもいますよ」
和尚さんはそれ以上はあまり語らなかったらしい。
翌日、親父は和尚さんをハシゴの下に留め置いて配線作業を終わらせたそうな。
【終】
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