第61話「頬」 @百物語2011本編
著:あかヰほくろ ◆zhUkpZ4lCM
昔の事です。私はしょっちゅう金縛りに合っていました。
主にアパートで起こる事が多かったように思います。
部屋の隅から斜めに向かって台所に走る子供たち。
数人いるのかパタパタと駆ける足音と笑い声。
自分の足元を何度も行き来する誰か。
頭の方でカサカサうるさいビニール袋。
怖いのでお経を唱えてると突然大声で叫ばれたり……!
そんないろいろな金縛りの中で一番怖かったもの、それは…
今住んでいる部屋は8畳一間で、布団を敷くと周りには誰も座れないのです。
それなのに私の頭の上に白い着物の女の人が正座しました。
私はキタ!と思って身構えました。
すると私の顔を覗き込む様にして女の人は前にかがみ、私の顔を眺めてから、突然、
私の頬を両手であごの方からすうっ…と頭の方にさするのです。
それを何度も、何度も…
私は今までで一番声を殺し石の様になりながら「出ていけ!出ていけ!」と心の中で
叫び、気配が消えるのを待ちました。
霊に触られたのはこの時が初めてでした。
「完」
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