第62話「ありがちな話」  @百物語2011本編

著:Yenn ◆3qDMUSp0ng  


235 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 02:08:30.97 ID:hPkmSRgw0
Yenn ◆3qDMUSp0ng様

「ありがちな話」
 
 深夜のファミレスからの帰り道。
 まっすぐな道を、当時の彼氏の自転車の後ろに座って、ぼんやりすすでいた。
 ふと顔をあげると、前を先行する自転車が見えた。


 ふらふら進んでいて、進行速度は速くないから、このままの直線で追い抜くことになりそう。
 よく見ると制服を着ているようで、それが警察のそれに見えた。
 
 彼氏は飲めなくて素面だったけど、さすがに二人乗りで深夜だし、
 これは彼氏とめた方がいいかなあと思った。
 その直後、アタシが彼氏を止める前に、その自転車は川の手前の脇道にそれた。
 
 フラフラしながら巡回とか大丈夫か?と思って、警官が曲がった道の先を覗き込んだ。
 そこはせいぜい20畳ほどの大きさの墓地で、その小さな入り口以外壁に囲まれた行き止まりになっていた。
 当然、そこに自転車も警官も、何もない。
 
 アタシは何も言えず、そのまま家まで黙ったままだった。
 
 帰って少し落ち着いて、彼氏に「あの警官、なんだったんだろうね?」と話しかけた。
 理屈のつく説明がほしかったし、笑って済ませるならそれで気味悪さを吹き飛ばしたかった。
 アタシはその選択を後悔した。
 
 彼には前を行く自転車なんて見えてなかった。

【完】