第63話「大きなヤドカリ」 @百物語2011本編
著:釣り人 ◆sRCidpIShE
ある日、夜釣りに出かけた。よっぽど条件が良かったのか
その日はひっきりなしにアタリがあったんだ。それこそひっきりなしに。
良型のコトヒキやホシミゾイサキ、それにゴマフエダイ。
小さなクーラーボックスに釣れた魚をどんどん入れる。
いつもの近場で、まさかそんなに釣れると思ってなかったから、
持参した餌「半ボイルオキアミ」の残りが少なくなってきた。
夜遅くなるにつれ、釣れる魚のサイズは大きくなってきてたから、
餌不足で釣りを止めるのも悔しい。他の餌はないかと考えた。
そしたら、波打ち際から少し離れた草むら近くに
オカヤドカリが沢山いるのを思い出した。
オカヤドカリを貝殻から引きずり出し、腹の部分をちぎったものは
最高のエサになるって聞いたことがあったんだ。
それを使って3投目、60cm超のハマフエフキが釣れた。
こりゃ、オカヤドカリ追加で確保するしかないよね。
もう一度草むらに戻ってオカヤドカリを探す。
ガサガサ音がして、ヤコウガイの殻に入った大物が歩いてる!!
「よっしゃあ!」って貝殻捕まえてひっくりかえす。
大きなハサミに気をつけて中身を引きずり出そうとしたら、
貝殻からでてきたのは、ヒトの手だった...色白の細い指5本。
どうやって釣り場から家に帰ったのか憶えていない。
竿とクーラーボックスは持って帰ってきてた。
すごく、気味の悪い体験だった。
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