第74話「無題」 @百物語2011本編
著:ばれかい ◆yj6HeeuFqY
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私が高校生の頃実家で飼っていた猫の話。
うちの猫をAとする。
うちの小屋に捨てられていた猫で
最初全くなつかなかったAに
私は毎日餌をあげ、なつかせるのに苦労した思い出がある。
餌付けが成功しはれてうちの猫になってくれたのだが
その後のAの人生は本当に過酷だったと思う。
田舎ならではの昼は放し飼いをしていたのだが
うちに来て2箇月ほどたったある日、
母の叫び声にびっくりして
外にでた私の目に入ったのは
近所の家の大型犬にくわえられた血だらけのAだった。
なんとか犬を撃退してAを助けたのだが
Aは虫の息でお腹に穴もあき内蔵も少しでていた。
すぐ病院へ連れていき手術をしてもらい命は助かったのだが
神経をやられてしまったAの後左足はもう二度と動くことはなかった。
その後リハビリを行い3本足で器用に歩くようになったのだが
どうしても動きに鈍さがあり
池におちたり、カラスに虐められたり苦労していた。
※夜中に外から猫の鳴き声がするとおもって外を見たら
Aがうちの池で溺れニャーニャーいって助けを求めてたのも
いい思い出w
でもネズミや雀はうまく捕まえていたなぁ
うちに来て5ヶ月
うちの道路を挾んで向かいの家にメス猫が
住みついたようだった。※メス猫はBとします。
図
うち→□ ┃道路┃ □←向かいのうち
Aはオス猫。
Bに惚れたのかAは毎日左後ろ足を引きずりながら
毎日朝になると道路を渡りBの家へ行き一緒に遊んでいるようだった。
夏休みだった私は毎朝Aを送り出すのが日課になっていた。
※夜はAを家の中に入れて家の鍵を締めて外にでられないようにしてたので
朝早くに家の鍵を開けてあげないとAは外に出られなかった
鍵あけないとAがうるさくニャーニャー(あけろあけろと)鳴いて大変だったw
でもBはすぐ死んでしまった。
田舎の人はわかると思うが、田舎の小屋には昔ネズミ退治用の
毒団子ってのがあって、それを食べて死んでしまった。
Bが死んだということを理解できていないのか
それとも、探し続けていたのかはわからない。
Bが死んだあともAは毎日朝になると
道路を渡り、Aの家へ通うことをやめなかった。
Bの家の庭に行き、Bを呼んでいるかのように
「にゃーにゃー」足を引きずりながら歩き回って
「にゃーにゃー」と鳴いていた。
そして夜になると疲れてうちに帰ってくる。
ただいまを言うように「にゃー」といってうちに入る。
その繰り返しだった。
Aに言葉はわからないかもしれないが
「Bはもう死んだんだよ」って言い聞かせていた。
でも毎日通うのをやめない。
そんなある日の朝いつものようにAにいってらっしゃいを
して道路をわたるのを見送っていた時Aは車にひかれた。
毎日Bを呼び続けて疲れていたのかもしれない。
足を怪我してなかったら轢かれていなかったのかもしれない。
車にひかれたAのそばによると目は飛び出て
血だらけで顎も外れていた。
それでもまだあったかくて、息をしていて。。。。
病院へ連れていった。
息はあった。でももうダメだった。
飛び出た目は私が押し込んであげた。
庭にお墓も作ってあげた。
すごく悲しかった。
悲しくて辛かった。
次の日の朝になり
「にゃーにゃー(鍵をあけろ)」と鳴き声が聞こえた。
寝ぼけてたんだと思う
いつものようにAのために家の鍵を開けなきゃ
そう思って家の鍵を開けたとき、
もういないってことを思い出した(目が覚めた?)
不思議だった。
でも次の日も朝「にゃーにゃー(鍵をあけろ)」と聞こえた。
そして夜もAがいつも帰ってきてた時間頃に
「にゃー」と聞こえることが続いた。
もう10年になる。自分はもう実家にはいないのだが
今でもAがいた夏の時期になると鳴き声が聞こえる気がすると母がいう。
AはBが死んだことも、自分が死んだことも気づかずに
まだ、毎日Bを探しに道路を渡り向かいの家にいっているのかもしれない。
A、Bと会えてないの?
A、お前ももう死んでいるんだから、
二匹とも死んでいるんだから、頼むから二匹で幸せに遊んでいてくれ。
そう思わずに入られない。
猫にも魂はあると思う。そう思った不思議な怖い話です。
【完】
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