第77話「田舎にて」 @百物語2011本編
著:ユウ ◆pK2t4W3twQ
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今思うと怖い、と言うより不思議な話。
小学生の時だったな、何年生かは忘れたけど。
俺の親父の実家が山形にあって、夏休みの何日かをそこで過ごしたのね。
田舎とか行くの初めてだったから、弟と一緒にワクワクしてたの覚えてる。
まぁ良く見る田舎の風景が広がっててさ。
コンビニなんかはもちろん無くて、雑貨屋に行くだけでも結構歩かないとならないような。
今でもああいった土地は好きなんだけどね。
で、田舎で遊ぶって言ったら大体が山とか川とかになるワケで。
弟と連れ立って夕方暗くなるまで遊んで、っていうのがそこでの過ごし方だった。
でも何日か経つと同じ場所で遊ぶのも飽きてくるんだよね、子供だし。
だから少し遠くに足を伸ばして遊び場を探すのにそう時間は掛からなかった。
ある日の夕方近くかな、実家からだいぶ離れた山に行ったのね。
周りに家も無くて、人影も無いようなトコ。
それでも来た道は一本道だったから不安は感じてなかったな。
山道の入り口に石碑みたいなのが建ってたのを覚えてる。
弟と一緒にしばらく歩いてたら、木の陰から「何か」がこっちを覗いてたんだ。
大きさはどのくらいだったっけ、俺らとそんなに変わらなかったと思うけど。
夕闇で顔とかはよく見えなかった。
でもその中ではっきり見えたシルエット。
こっちを覗く頭のこめかみの辺りにツノが有ったんだよね。
もちろん弟と一緒に全力で逃げたよ。
人家の見えるトコまで全力で。
安堵感から足を止めて後ろを振り返ったけど、追っては来なかったみたい。
そのあと、親達には話しても取り合ってくれなかったけどね。
俺としては「鬼」とかの類だったのかな・・・なんて思ってる。
東北って妖怪の話とか多いじゃん?
でもそんなコト抜きに、意外とその辺の山とかにも居るのかもね。
(完)
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