第79話「天井の彼女」  @百物語2011本編

著:ゆあ ◆96j0kyRRhEF2  


285 :ゆあ ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 03:28:47.82 ID:hPkmSRgw0
天井の彼女

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今年の4月下旬の事でした。
横になっていると、ふと身体に違和感を覚えました。
私はたまに金縛りに遭う事があるのですが、完全に動けない訳ではないのですが
身体全体が痺れる感じがするのですが
その日は普段より、その身体のしびれが酷い状態でした。
部屋の中は遮光カーテンのお陰もあって真っ暗。
ベッドの位置から言うと右側を向いて寝ていたのですが
背後…いえ、背後と言うよりも部屋の真ん中にある蛍光灯のあたり
つまり天井から女性の「あー…あー…」と言う声が聞こえてきました。
声の聞こえ方からして、天井から逆さにぶら下がっている状態のようでした。
その声にただならぬ狂気を感じて目が開けられません。
その女性はずっと「あー…あー…」と言っています。
言いたい事があるならはっきり伝えて、と言おうと思いましたが声が出ません。
仕方がないので心の中でずっとそう念じていました。

286 :ゆあ ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 03:29:29.18 ID:hPkmSRgw0
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するとその女性は「あー…あー……ゆきお…」と言いました。
ゆきお、とも雪を、とも取れるような言い方でしたが
残念ながら私には全く心当たりがありません。
他にもとぎれとぎれに何か単語を言っていたようですが残念ながら覚えていません。
部屋の中を移動している気がしましたが怖くて目が開けられませんでした。
ぎゅっと目を瞑っていたのですが、恐怖心がうんだのか、目の奥で
ベッドの右側に女性の白い足が浮かびました。
そしてまた天井に戻った様な気配がしました。
また頭にイメージが浮かびます。天井から逆さにぶら下がった女性の姿です。
髪はセミロングくらいでしょうか。乱れていて正確な長さはわかりませんが
恐らく肩より少し下くらいの長さでしょう。
体感にして10分。10分の間ずっと「あー…あー…」と言い続けていた女性は
結局大した情報を私に与えないまま消えてしまいました。
彼女が何をしたかったのかは私にはわかりません。

【完】