第84話「充電器」 @百物語2011本編
著:ゆあ ◆96j0kyRRhEF2
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私の部屋では、よく物がなくなります。
たまに配置のおかしくなっている小物があります。
元々大雑把な性格の私は、別段気にもとめてなかったのですが…。
3週間に一回程度の割合で、ケイタイの充電器がコンセントから抜けている事があります。
そこでも大雑把な私は、きっとコンセントが足りなくて充電器を抜いたんだと思っていました。
しかし、何度も何度も同じような事があり、充電器が抜けている部分に別の何かがささっている
訳ではないと気づいてから、少し薄気味悪く感じるようになりました。
ちなみにこれは、数日をかけて書いているのですが、書き始めてから
毎日ケータイの充電器だけ、コンセントから抜けているのを発見する様になりました。
それだけ足を引っかけやすい所にある訳でもなく、抜けやすくなっている訳でもありません。
ある日の夜、私がテーブルライトの明かりで本を読んでいました。
すると突然、部屋全体ががたがたと鳴り始めました。
何事かと身体を起こすと、一人暮らしの私の部屋に、私の他にもう1人、人が居たんです。
私のケータイの充電器を持って立っていました。
目が合いました。私はその顔に見覚えがありました。
その顔は、私が小学生の頃に見た事がありました。
でも同級生ではありません。
その人…その子は小学校高学年くらいの私の姿をしていました。
身体が硬直しました。
これもドッペルゲンガーと言うのだろうか。とすれば私は死んでしまうんだろうか。
でも、何故私のケータイの充電器を持っているんだろう…。
その子に声をかけようと思いました。もうこんな事は終わらせなければなりません。
「ねぇ、それ、どうしていつも抜くの?」
子供は答えません。
「困りはしないんだけど、毎回コンセントにさすのは面倒だからやめてくれるかな?」
子供の口が動きましたが、声は聞こえませんでした。
「わかったら手に持ってる物を置いてくれる?」
子供は素直に手から充電器を離しました。
「ありがとう。それで…貴方は私なの?」
「おねえちゃんがあたしを殺したんだ!」
そう言ってもう1人の私は消えてしまいました。
私は、子供の頃の記憶がほとんどありません。
それを子供の頃の私が悲しんでいるのでしょうか…。
【完】
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