第92話「逆さま」  @百物語2011本編

著:ゆあ ◆96j0kyRRhEF2  


322 :ゆあ ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 04:11:58.02 ID:hPkmSRgw0
逆さま

私はお話を読んでいると、無意識のうちに頭の中でイメージを浮かべるクセがあります。
とある、怖いお話を読んでいた時の事です。
その時も無意識に、頭に映像が浮かんでいました。
家にまつわる心霊現象について書かれていたお話だったと思います。
読んでいる途中で、浮かんでいる映像に何か違和感を覚えました。
お話に関係のない何かが居るのです。
それは…天井から逆さにぶら下がった女の人。
つい先日、私の部屋に現れた女性でした。
もうお話を読むどころではありません。
普段ならお話を読んでいる最中しか映像は浮かばないのですが
その時は違いました。
その女性が、知らない部屋にぶら下がっているのがまだ見えているのです。
ゆっくりと辺りをキョロキョロしていました。
「見てはいけない!」何故かわかりませんがそう思いました。
彼女の動きが一瞬止まりました。
私は開いていたページを急いで閉じました。
これできっと彼女も消えると思いました。
しかし、頭の中のイメージは鮮明になっていきます。
横を向いている彼女が笑った気がしました。
するとぐるりと首だけをこちらに向け、口を動かしました。
声は聞こえませんが「み、つ、け、た」そう言っているようでした。
そして頭の中のイメージは途切れたのですが…
座っていた私の目の前に、上からのぞき込むように逆さまの顔が現れ
嬉しそうに口を「あー」と開けて消えました。
これからも逆さまの彼女は現れるのでしょうか…。

【完】