第94話「倉庫」  @百物語2011本編

著:龍聖 ◆U.fI9vC3eU  


327 :龍聖 ◆U.fI9vC3eU :2011/08/20(土) 04:26:39.05 ID:kbxEWbN+0
第九十四話

【倉庫】

数年前のことです。
父の会社がとある倉庫を借りることになりました。
奥行きのある倉庫の前には簡単な作業が行えるスペース。
そして倉庫内外から入れる事務所が隣接しています。
さらに事務所には倉庫内の階段から繋がる二階がありました。


倉庫を借りてすぐ、会社内ではある話題で持ち切りになったそうです。
『階段を上る足音がする。白い服を着た女がいる。女の子がいる』
社員だけでなく、作業に来ていたパートさんもほぼ全員が音を聞いたり姿を見ていました。
私の父を除いて。


ある日の夜、父が倉庫に行かなければならなくなりました。
「別に怖いわけではないけど」という前置きをしつつ、父は私に一緒に来てほしいと言いました。
私は全力で拒否をしましたが、執拗な言い様にうんざりし渋々行くことにしました。
倉庫に着き「絶対中には入らないからね!」と言い、私は外で父を待っていました。
噂の女性の出没場所を大体聞いていた私は、絶対事務所の二階の窓を見ないよう意識的に下を向いていました。


328 :龍聖 ◆U.fI9vC3eU :2011/08/20(土) 04:28:47.80 ID:kbxEWbN+0
そう、絶対見ないと下を向いていたはずなのです。
しかし私の目はしっかりと事務所の二階の窓、そこから下を見下ろす白い服の女性の姿を捉えていたのです。
全身が固まり、冷たいものを感じました。
「これは見てはいけないものだ!」
直感でそう思い、目を合わせないように急いで視線を移しました。
腕は鳥肌でびっしりで、冷たい汗と共に体が震えていました。
その後すぐに倉庫から父が戻って来ましたが、父は何も見ていないと言っていました。


この話には、ちょっとした後日談があります。
社員の内の一人がその女性を連れて帰ってしまったらしいのです。
ある日を境に事故が頻発し怪我を負い、病気をするようになったのです。
身体に重みを感じたこと、そして倉庫でのこともあり然る場所へ相談しに行ったところ、直ぐお祓いの運びになったそうです。
そこで女性を背負っていたことが分かりました。

329 :龍聖 ◆U.fI9vC3eU :2011/08/20(土) 04:30:52.49 ID:kbxEWbN+0
好奇心も少しあり、私は父に頼み倉庫のことを調べてもらいました。
そこで分かったのは、事務所はもともと民家で、そこの二階で病気で亡くなった女性がいること。
神棚を残して、住んでいた家族が引っ越してしまったということでした。
女性の家族と引っ越した家族が同じ家族かどうかはまでは分かりませんでした。


お祓い後ですが、その後も倉庫で女の姿が目撃されています。
もともと二人いるということなので、お祓いされた女性とは別かもしれませんが。
目撃者によると、戻ってきているとのことでした。


その後その倉庫は別の会社が使ってたようですが、どうやら倒産したようです。


【了】